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「生きること」ただそれだけの約束のために

きょう 届いた 生まれたばかりの君の写真 毎日同じように 繰り返す喧騒 人々が帰りをいそぐ夕方をまわって ひとり  疲れた体で電車に飛びのる頃には たくさんの家々に 暖かなひかりが満ちていて 君がお腹の中から 生まれてくる今日まで たいせつに握ってきた掌のなかに あつまってきた天使たちがたくさんの 魔法の花束をわたす 僕は君のほほえみのために ひのあたる花壇に小さな花を植えよう そして世界中が君の誕生を祝福していることに 僕らが きょうも生かされていること に 感謝の詩をうたおう 僕がうつむくことで傷つけたあのひとは 僕を許してはくれないだろう あの日 静かにドアをしめ 哀しみを誰にももらさないように ひとりで消えていったあのひとは いったい  どこで哀しみを洗い流したのだろう 新しい命がうまれ 山がいぶき 鳥たちがうたい 川が流れ 風がほほえむ くりかえすことが僕たち人間に与えられた約束なら 消えていこうとする想いのために どんなに涙があふれても つぎつぎと生まれくる新しい命のために たくさんの幸 せがふりそそぐことを祈ろう すべての人々のために いきるための愛するうたを すべての約束が輝きわたるこの空に 血のにじんだ手であしで ぼくが天使にかこまれて目を閉じる 瞬間まで 生まれてきたことに感謝して すべてのものたちに感謝して いきるための愛するうたを すべての約束が輝きわたるこの空に 「生きること」 ただそれだけの約束のために

潮のにおい



台風がすぎて
暑すぎる夏がきた
きのうの自分が何をしていたのか
思い出せないほどまぶしい夏が

それにしても
なんできょうはスーツなんかを着込んでいるんだろう

違う日にしたらよかったのにと
せっかくとったアポを悔やませるような雨が土砂降りにかわった

買ったばかりのビニル傘から流れ落ちる雨で書類の袋が濡れないように
靴も鞄もスーツだってこんなに濡らしちゃったのに
はげしい雨から
逃げるようにかけこんだビルの入り口で
転びそうになりながら
ひんやりとした空気の温度に少しほっとする

明日は故郷の町にかえって
海にでも行こう
バス停の角のおじさんのうちで冷やし中華を食べて
だらだらと下りていく海までの道を久しぶりにあるいてみよう
トイレの鏡の前で
にっこりとほほえんでみせる
笑うことだって戦争なんだから

さっきまでの雨が
青い空にかわって
隠れていた蝉の鳴き声が聞こえる
乾き始めた空気は少し土のにおいがするね

あしたの天気なんか
どうだってかまわない
故郷の町にかえって
そうだよ海へ行くんだ

.........ついでに月曜日も休んじゃっていいかな

そんなことをふと考えながら
明日は潮のにおいがする
あの町へ帰ろう








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